こんにちは。
オーナーのJUNです。
あれはラガッツォ・キングの入荷が目前に迫ったとある9月の小春日和のこと…。
いつも常連さんがたには少し早く入荷をお知らせしているのですが、
40代の常連さんにラガッツォ・キングの素晴らしさをこんこんと力説していたところ。

「へぇ~、なんだか良さそうですね~」
と、嬉しいお声ですが…
えっ 「なんだか」 「良さそう」!?
すっっっごく良いんだけど、伝わって、、、ない、、、って、コト!?
ということで、なぜいまいちピンと来ていらっしゃらないかというのを考えてみました。
お客様は40代。1990年代の第2次ヴィンテージ・ブームを経験されて、当時憧れたモノたちを大人になって改めて楽しまれているという感覚です。
僕は1971年生まれで14歳の頃から古着屋に通い始めたので、80年代の第1次ヴィンテージブームのまさに熱狂の中にいたという感じ。
60年代・70年代にアイビーファッションが日本を席捲した余韻がまだまだ色濃く残っていましたし、アイビーファッションを愛する先輩方を無意識にお手本にしていたんだと思います。
(とはいえ、真似し始めるのは19歳頃ですが…)
したがって、アイビーファッションやプレッピーといった格好には間違いなく馴染みがあるし自然と取り入れてきたものであるのは間違いありません。
と、いうことは、
もしやローファーを知らない、なじみがない?
手前味噌ではありますが、僕は無類の靴好きです。
スニーカー、ローファー、スリッポン、ブーツ等など、学生時代から人を蹴る靴(エンジニア)をはじめとしてありとあらゆる靴を履いてきました。
なかでも革靴には目がありません。
ことにローファーは、僕がもうひとつのお店(サロン・ド・アナログ)で展開しているランコートというメイン州の靴工房に直接靴を作りにいくほどにこだわりを持っている分野です。
ローファーもルーツが分かれば面白みがひとしおだからね。
ローファーをアイビーに関して古い順にちょっとおさらいしてみましょう。
・ ペニーローファー(Penny Loafer)

1936年、アメリカで創業した G.H. Bass 社が、甲にベルト状のストラップがデザインされたスリッポンタイプのモカシン「Weejun」を発売したことがペニーローファーの発祥と言われています。
戦後、アメリカのアイビーリーグの学生たちが制服として着用していたことから一般でも広くでも着用されるようになり、1950〜60年代には ”アイビールック” の象徴靴の一つになっていきました。
「ペニーローファー」という呼称は、このローファーを履いていた学生が甲のベルト部分にペニー銅貨を差していたことから呼ばれるようになった、という通説はあまりにも有名ですよね?
最も定番で最も伝統的なローファーの形といえるのではないでしょうか。
・タッセルローファー(Tassel Loafer)
1950年代にアメリカのAlden(オールデン)社がタッセル付きのローファーを発売したことが始まりだと言われています。
タッセルがあることでペニーローファーよりもフォーマルな印象になり、50年代~60年代でビジネスマンやフォーマルシーンで重宝されるようになりました。
・ヴァンプローファー/ベネチアンローファー(Vamp Loafer/Venetian Loafer)

50~60年代のアイビーリーガーに愛されたヴァンプローファー。
別名ベネチアンローファーとも呼ばれることがある、モカシン縫いのステッチのみが装飾というシンプルなデザインです。
日本でもアイビーファッションの流行とともにコブラヴァンプが定着していきましたが、特に名高いのは1892年創業の革靴の最高峰と呼ばれるシカゴの老舗「フローシャイム」の”YUMA”でしょう。
コブラの頭部を思い起こさせる形状のモカ縫いは「コブラ・ヴァンプ」と呼ばれ日本の学生の間でも猛流行しました。
画像はお借りしてきた1967年のSearsの広告なのですが、ペニーローファー等とあわせてしっかりコブラヴァンプのスリッポンが肩を並べていることから、アメリカ国内での人気の高さがうかがえます。

他の同年代の広告でも。

←手前のブラックの彼がお洒落に履きこなしているのも同型のスリッポン。
引き算上手です。

こちらも、中央のいかにも優等生な彼はマクイーンパンツと合わせてきれいめに、右側の彼はカジュアルにデニムと合わせて履いています。
すっきりとしてシンプルな靴だけに合わせの幅は意外にも広めです。
60年代のアイビーファッションの定番の足元として、ウィングチップ、ペニーローファーに次いで人気の形だったことがお分かりでしょう。
ここでラッガツォ・キングのダンを見直してもらうと、その良さというか、面白み、いかに”遊んだ靴”かが分かってもらえるのではないでしょうか。


隆起したモカシンステッチは完璧なコブラヴァンプの再現にほかならないのですが、
ガラスレザーのボディとハンドステッチの入ったクレープソールのステッチは格式高い革靴のそれであるのに、そこに唐突なラバーソールの組み合わせ。80年代のアウトドアスタイルを彷彿とさせます。

ガラスレザーでヴィンテージの風合いがむんむんと漂ってくるヴァンプ・スリッポン、そこに「らしすぎない」「キメすぎない」ラフさがガツンと加わった、大人にしか分からない(大人でもわかる人にしか分からない(笑))面白い靴なんです。
本体はヴァンプ・ローファーなのでアイビーファッション等にしっくりと馴染みますし、かといってキレイ目すぎず、かといってカジュアルにも寄りすぎない、計算しつくされたアソビが漂う唯一無二のスリッポンです。

こんな感じで、カジュアルにデニム・チマヨと合わせても、絶妙にラフだけどラフ過ぎない、丁度よくバランスをとってくれているのです!
これで少しでもこの靴の楽しさが分かってもらえるといいな~と、願いながら。。。
あ、ちなみに、ガラスレザーなので今年の秋の長雨もばっちりいけます。
コーディネートのご相談やご試着のご希望はお気軽に。
一緒にお洒落で遊んでくださる仲間を募集しております(笑)